ドリルを売るには穴を売れ
今回はビジネスにおいて重要なマーケティングついて分かりやすく書いた本である
「ドリルを売るには穴を売れ」を紹介していきたいと思います。
マーケティングとなると専門用語が飛び交い、なかなか理解しにくいことが多いですが、本書はマーケティング初心者でも分かるようにストーリー調で解説されているので、実際の営業現場をイメージしながら読み進めていくことができます。
ビジネスパーソンとしてはおさえておきたい知識を解説しているので、是非最後までご覧頂ければ幸いです!
書籍情報
著者 | 佐藤義典 |
出版社 | 青春出版社 |
出版日 | 2007/1/10 |
ページ数 | 256 ページ |
目次 | ・序章:”マーケティング脳”を鍛える ・第一章:あなたは何を売っているのか? ・第二章:誰があなたの商品を買ってくれるのか? ・第三章:あなたの商品でなければならない理由をつくる ・第四章:どのようにして価値を届けるか? ・第五章:強い戦略は美しい |
著者略歴 | 早稲田大学政治経済学部卒業。NTTで営業やマーケティングを経験後、米ペンシルバニア大ウォートン校にてMBAを取得。その後、外資系メーカーにてガムのブランド責任者としてマーケティング、営業、開発、製造などを統括・外資系マーケティングエージェンシーでは、営業チームのヘッドやコンサルティングチームのヘッドなどを歴任。現代は「戦略と戦術を結ぶ」ことを理念とする経営コンサルティング会社、ストラテジー&タクティクス株式会社の代表取締役社長として活躍中。無料マーケティングメルマガ、「売れたま!」発行者としても知られる。 |
このような方にオススメ!
「現在、営業の仕事をしている方」
マーケティングと営業は似ているようで異なった領域です。マーケティングはいわば「売れる仕組み」を作る手法であり、営業はその仕組みの中で売上を拡大させるための手法と言えます。したがって、どれだけ営業力を伸ばしたとしても、そもそも売れる仕組みであるインフラが整っていなければ労力だけ発生し、結果が出ないという状況に陥ってしまいますので、マーケティングと営業は2つに1つなのだと考えましょう。
「扱っているプロダクトが売れなくて困っている方」
マーケティングは「売れる仕組み」をいかに作るかが重要ですが、現在販売している製品やサービスが売れなくなっているということは、この「売れる仕組み」にエラーが生じている可能性があります。販売当初は仕組みがうまく機能していて売れていたとしても、時間の経過とともにエラーが生じてくるのは当たり前なので、どこの部分がボトルネックとなっているのかを分析し、そのボトルネックとなっているエラーをいかに解消するかがマーケターの力量として問われます。
「これから新しいプロダクトを展開予定の方」
製品やサービスの根幹とも言うべき「プロダクト」ですが、どれだけ自分たちにとって良いプロダクトを世に出しても、消費者にとって良いプロダクトだと感じなければ、思うように売上が拡大していくことはないでしょう。そうした低迷を防ぐためには、事前に市場から見て「価値があるかどうか」という観点でプロダクトを生み出す必要があるので、これから新しいプロダクトを作っていくという方には参考になるかと思います。
消費者の視点でプロダクト考えることを「マーケット・イン」と言います。昨今はプロダクトが溢れかえっているので販売戦略でマーケット・インの考え方は非常に重要です。
この本をまとめると?
「マーケティングの入門書として書いた本」
マーケティングについて書かれた本は多く発行されていますが、その多くのマーケティングの本は専門的なことが書かれていることが多く、今までマーケティングについてまったく触れてこなかった方にとってはなかなか理解しにくい内容となっています。ですが、本書は冒頭でも述べた通り、ストーリー調で描かれた1冊であり、イメージを膨らませながらマーケティングの知識をインプットできるので、意外とすんなり頭に入っていくと思います。ストーリーとしては、主人公である真子が、撤退寸前のイタリアンレストランをマーケティングの知識を活用して立て直す内容となっており、ドラマで描かれているようなサクセスストーリーとなっています。
ストーリーはベタな展開ですが、実際同じような状況になったら結構修羅場だと思います笑。
得られる知恵は?
「モノやサービスを売るための仕組みを作る知恵」
世の中はあらゆる製品やサービスが溢れかえっており、ただ市場に製品やサービスを投入するだけでは売れなくなってきています。たとえ、今までにはなかった革新的な製品を販売したとしても、世の中に受け入れられるかは消費者次第であり、消費者に「欲しい!」と思わせるには、その製品やサービスに「価値」がなければなりません。本書のタイトルにもあるように、消費者はドリルが欲しいのではなく、穴を空ける道具であるドリルが欲しいのであって、穴を空ける手段がドリル以外にもあって、ドリルよりも安かったり、ドリルよりも簡単に穴を空けられるようであれば、ドリルは買わないという選択を取ります。このように、消費者にとって価値のある製品やサービスを提供していくというマーケティング脳の基本をこの本で学んでいきましょう。
「良いモノやサービスを作れば売れる」というプロダクトアウトの考えは通用しなくなってきていますが、だからといって消費者の視点だけでプロダクトを作っても御用聞きになってしまうのでバランスが大切です。
知恵獲得レベル
(level.2)
マーケティング本の中でも入門書として分かりやすく解説されているだけでなく、ページ数も256ページとそこまで多くないため、かなり読みやすい部類だと思います。ただし、普段販売に従事していない方や社会人経験がない方にとってはマーケティングの知識自体に多少の抵抗を感じる可能性があるため★2としました。
知恵を得るためのポイントは?
「顧客は価値を買う」
先程のドリルの例でも述べましたが、消費者は製品やサービス自体を欲しがっているのではなく、製品やサービスが生み出す「価値」を買っていると言えます。そして、消費者が製品やサービスを購入するのは「価値>価格」の状態になっている場合であり、製品やサービスが生み出す価値が価格よりも高いと感じたら買わないという選択を取ります。例えば、お腹が空いてコンビニでおにぎりを買うときに、1個200円以内であればおにぎりを買うことがありますが、これが1個1万円のおにぎりだと価値に見合っていないと判断されてなかなか売れない可能性があります。ただし、この1万円のおにぎりがふんだんに高級食材を使用していて、1万円の価値があると消費者に判断されれば、高値であっても買う消費者はいるかもしれません。このように、いかに消費者に価値を感じさせるかがマーケティングの根幹と言っても過言ではありません。
「マーケティングは現場で起こっている」
マーケティングは「売れる仕組み」を作る手法なので、販売現場ではなく本社等のオフィスが主戦場だとイメージされがちですが、どのように売るかを会議室で議論したとしても、その議論は机上の空論になってしまいがちです。マーケティング脳を作るには「現場でヒントを探る」という考えが大切であり、よくよく観察すると消費者の購買心理が見えてきます。例えば、ロレックスの店舗で顧客を観察すれば、どのような顧客が来るのかを観察することができます。ロレックスを購入する層はエリートビジネスパーソンだったり、会社の役員だったりと明らかにお金に裕福な層であるのが観察によって明らかになりますが、これが会議室だけで当てずっぽうにターゲットを定めてしまうと、裕福な層向けに廉価品を提供してしまうというミスマッチが起こりがちなので、マーケターは実際に現場に立って売れる仕組みを構築していくことが求められます。
「ベネフィット、セグメンテーションとターゲティング、差別化、4Pに一貫性を持たせる」
本書ではマーケティングの基本である「ベネフィット」「セグメンテーション」「ターゲティング」「差別化」「4P」を1章ずつ解説しています。「ベネフィット」とは製品やサービスの価値、「セグメンテーション」とは顧客層、「ターゲット」とは顧客層の中にいる売りたい相手、「差別化」とは競合よりも高い価値を提供すること、「4P」とは価格、流通・販売経路、製品やサービス、販促・広告のことであり、これらのマーケティングの基本は一貫性のある仕組みにしなければなりません。例えば、吉野家は比較的安価に提供している飲食店ですが、ターゲットは主にサラリーマンです。ですが、いきなり高級路線に打ち出して1杯5,000円の牛丼を提供し始めたらかなり違和感を感じると思います。一度定着した価格帯や顧客は簡単に変わることはないので、この5つの概念はブレない軸として考えておく必要があります。
横文字だらけで覚えにくいのがマーケティングの学問の特徴ですが、普段私たちが当たり前に行っている購買行動を言語化した概念なので意外とイメージしやすいと思います。
アクションプラン
「買ったモノやサービスの価値を考える」
マーケティング脳を鍛える簡単な方法は、「実際に自分が買ってみる」ことです。当たり前ですが、何かのプロダクトを売る人は、同時に消費者ですので、普段自分が買っているものに対してどのような価値を感じているのかを考えてみましょう。例えば、スマートフォンの購入を考えている場合、機種はiPhoneなのか、GooglePixelなのかとあれこれ考えると思いますが、そのあれこれは「価格」なのか「スペック」なのか、はたまた「ブランド」なのかと総合的に評価して価値を見出し、購入を検討する流れとなります。このように、消費者側の視点でプロダクトを見れば、売る側としてもたくさんのヒントが得られます。
「食べ歩きをする」
消費者視点で考えるのに際し、実際にあらゆる製品やサービスを試してもいいですが、おすすめの方法は「食べ歩き」です。飲食店は料理の質から接客方法、立地、価格帯と選ぶ基準がたくさんある上に、あらゆる飲食店が飽和状態でしのぎを削っている群雄割拠のマーケットなので、消費者理解のヒントの宝庫であると言えます。食べログ等の評価サイトで探してみてもいいですが、普段街中を歩いている時に行列のできているお店や、直感的にいい雰囲気なお店を探してみると、他店舗との差別化の参考になるかと思います。
「副業をする」
現在、販売業務に従事している方であればマーケティングの知識はダイレクトに関わってくるのですぐに活用できますが、販売業務に携わっていない場合はなかなかマーケティング感覚を養成するのが難しいので、何かしらの副業をしてみるのがオススメです。特に物販はマーケティングの知識が活かせる分野であり、どんな商材を販売し、価格はいくらに設定して、チャネルはネットなのかリアルなのかと嫌でもマーケティングを考えなければならないので、本書の知恵が活かせると思います。ただし、物販となると仕入れや設備で初期投資が必要になることが多いので、失敗して全財産が消え失せて人生終了とならないよう、リスクは抱えすぎないようにしましょう。
普段、自分がどのような基準でモノやサービスを利用しているかを意識しながらプロダクトを作り出せば、作るプロダクトの価値を見つけるヒントになるでしょう。
まとめ
本書はマーケティングの入門書として、比較的分かりやすくマーケティングの知識を紹介している良書ですが、マーケティングのノウハウはあくまで「売るための仕組み」であって、残念ながらビジネスはマーケティングのノウハウだけあれば成功するような甘い世界ではありません。マーケティング以外にもマネジメントの手法やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)、SWOT分析等の知識が求められますので、ビジネスの知識は常に磨き続けていくことを心掛けましょう。
本記事では、知恵を得るために事前にインプットしておきたい情報のみを厳選して記載しておりますので、本書の知恵を得たいと思った方は実際に手にとって読んで頂ければ 幸いです。