現代語訳 論語と算盤
今回は「現代語訳 論語と算盤」をご紹介したいと思います。
この本は新一万円札の肖像画となった渋沢栄一先生の著書でも有名な一冊となっていますが、ビジネスをする上でのマインドを培う教科書として最適です。
現代では「儲かれば正義」といった利益至上主義が蔓延していますが、利益だけを追求するのではなく、論語で語られている道徳心も大切にしなさいということをこの本は教えてくれますので、少しでもビジネスに携わっている方は是非最後まで読んで頂ければ幸いです。
書籍情報
著者 | 渋沢栄一(訳者:守屋淳) |
出版社 | 株式会社筑摩書房 |
出版日 | 2010/2/10 |
ページ数 | 249ページ |
目次 | ・第1章:処世と信条 ・第2章:立志と学問 ・第3章:常識と習慣 ・第4章:仁義と富貴 ・第5章:理想と迷信 ・第6章:人格と修養 ・第7章:算盤と権利 ・第8章:実業と士道 ・第9章:教育と情誼 ・第10章:成敗と運命 |
このような方にオススメ!
「ビジネスで成功した方」
個人事業でも副業でもサラリーマンであっても、ビジネスで成功して利益をもたらすと天狗になってしまうことが往々にしてあります。ビジネスで成功したということは、必ず自分を信頼してくれたお客様やフォロワーが存在しているので、お客様やフォロワーに対して傲慢になるのを防ぐ術として本書は活用できます。
「これからビジネスを始める方」
これからビジネスを始める方も同様で、ビジネスでは利益を追求することは不可欠ですが、自分の利益ばかり考えている人は信用されないのでビジネスが上手くいかないことが多いです。優れたビジネスプランを展開することと同時に自身の人間性を磨くことで、ビジネスが上手くいく確率が上がりますので、本書でビジネスにおける道徳心を養いましょう。
「自己投資を習慣にしたい方」
読書や資格勉強等の自己投資は成功する上で欠かせないプロセスです。多くの方は「自己投資を頑張る!」と一念発起しても三日坊主で終わってしまうことが多いので、何か自己投資を始めるという前に「何のために自己投資をするのか」や「この自己投資は誰にどんな価値を届けることができるのか」といった目的意識をインプットするためのマインドを醸成するのに本書はうってつけです。
経営者であっても会社員であっても、ビジネスをしていると「儲けてなんぼ」のように、自分たちの利益だけを追求してしまうことがしばしばあります。人間の性質上、仕方がない部分ではありますが、エゴを抑えて利他を優先させるマインドを養うのに本書は気づきを与えてくれます。
この本をまとめると?
「渋沢栄一先生が培ったビジネスマインドを紹介している本」
渋沢栄一先生は「日本実業界の父」と言われるほど誰もが知っている大手企業の創設に携わった英傑ですが、若い頃は過激な尊王攘夷運動に勤しんでおり、幕府からは危険人物扱いされていた奇才でもあります。ですが、その後は幕府の中枢である一橋家に仕えることになり、大政奉還後は明治政府の役人として従事し、国を支える重要ポストに就くことになりました。その後は役人を辞め、第一国立銀行の頭取を務めたり、東京商工会議所を創設したりと、日本経済の礎を築いていきました。そのような経験の中で「資本主義の暴走」を問題視しており、本書では度々「論語」で語られる道徳心を養いなさいと説いています。
あまり知られていませんが、渋沢栄一先生は意外と女性関係にだらしがない性格をしていたようで、人生で2度結婚している(前妻とは死別)のに加えて、妾が複数人いたことから、子供は30人以上いたようです。「英雄色を好む」ということでしょうか笑。
得られる知恵は?
「ビジネスにおける道徳心を養う知恵」
ビジネスをしているとどうしても「儲けて贅沢な暮らしをしたい」「競合を蹴落としてでも勝ち取りたい」「自分だけメリットがあれば他はどうでもよい」といった想いを抱いてしまいがちですが、そんな欲望にブレーキをかけるために必要なのが「道徳心」です。ビジネスに限らず、日常生活においても大切な道徳心ですが、残念ながら学校教育ではあまり養うことができない分野であり、主に学校以外でのコミュニティで学ぶことが多いと思います。ですが、人間は元々深い欲望のある生き物であり、資本主義はそんな欲望で成り立っているので、欲望に本能を奪われないようするために、日頃から道徳心を磨く必要がありますが、本書では「なぜ、道徳心を磨くのか」といった根本部分を教えてくれるので、一生涯の知恵として頭に刻むことをオススメします。
人の購買意欲の根源は「欲望」ですが、売り手側としても欲望はありますので、その欲望を満たすためにビジネスを拡大させようとします。善い欲望は成長の推進剤となりますが、悪い欲望は社会にとって悪影響を及ぼすため、そのような悪い欲望を抑えるために道徳心を養う必要があるのです。
知恵獲得レベル
(Level.2)
文庫本で比較的読みやすく、ページ数もそこまで多くはありませんが、哲学的な内容がふんだんに書かれており、多少は考えながら読み進めていく必要があるため、★2とさせて頂きました。
知恵を得るためのポイントは?
「自分を磨く」
自分磨きと聞くと「資格勉強をしてスキルを身につける」「読書をして教養を身につける」「運動をしてスタイルを良くする」等の何かしらの向上心を持って行うことを指しますが、本書では「精神」と「知識」の両面を磨きつつ、他者貢献を目的とすることを自分磨きとしています。知識面は学習すれば身につきますが、どれだけ知識に精通していたとしても、精神面が未熟であれば私利私欲に走ったり、誰かを傷つけるために知識を活用してしまう可能性があります。この精神面を磨くのに最適なのが「論語」等の古典です。論語などの道徳心を養う書物を読んで日々の活動に他者貢献活動を取り入れると、やがては人格者として優れた人物になるでしょう。
「信用はすべてのもと」
日常生活においてもビジネスにおいても重要なのが「信用」です。信用はビジネスにおける根幹とも言える概念ですが、信用がなければ金融機関はお金を貸してはくれない、卸売業者は製品を卸してくれない、消費者は商品を買ってくれない等ビジネス自体が成り立たなくなります。昨今でインフルエンサーを広告等として活用しているのは、インフルエンサーを信用しているフォロワーが多数おり、インフルエンサーが商品を推奨すると、そのフォロワーたちの購買行動を促すことができるからです。ビジネスを始めたばかりの頃は信用はゼロに等しいので購入する人は少ないですが、商品の価値が市場で浸透したり、ビジネスパーソンの人柄が評価されたりすることで、徐々に信用が積み上がっていきます。そして信用が高まるにつれてフォロワーが増えていき、ビジネスが成功するというわけです。ですが、普段の振る舞いが傲慢だったり、利益追求のためなら非道徳的なことをしていればあっという間に信用は地の底まで落ちることになります。
「誠実に努力する」
基本的には努力しなければ成功することはほとんどないですが、努力したとしても成功するとは限りません。ですが、たとえ失敗したとしても、それはその一時の失敗であり、人生の失敗ではありません。その時に失敗したのであれば、また挑戦すればいいのです。努力していればお天道様はちゃんと見ているといった綺麗事を述べるつもりはないですが、行動しない限りは幸運を掴むことができないというのは遥か昔から語り継がれている事実なので、駄目で元々の精神で何かしらのチャレンジをすると良いでしょう。とはいえ、いきなりハードルが高いことに挑戦して失敗するとメンタルをくじかれて再起不能になる可能性があるので、「少しだけ難しい」くらいの難易度を目標に設定すると良いでしょう。
新しいスキルを身につけたり、一緒に助け合える仲間を見つけたりすることで成功する可能性は高まりますが、同時に心の鍛錬も合わせて行うことで周りから一目置かれる人間になることができますので、同時進行で善行を積んでいきましょう。
アクションプラン
「1日1回良いことをする」
道徳心を養うためには人間性を磨いていく努力を日々積み重ねていく必要がありますが、一朝一夕で高められるものではないため、コツコツと善行を積んでいく必要があります。どんな善行を積むかは人それぞれ違いますが、どれも共通して言えることは「私利私欲を捨てて、他者貢献で行うこと」ですので、自分が良いと思っていても、他者にとって迷惑なことであれば、それは善行とは言えません。例えば、毎日マナー違反を見つけては注意していくことを日課とした場合、確かに周りの人から感謝されることが多いと思いますが、マナー違反していた人が逆上してさらに迷惑をかける可能性があります。そうなるとイタチごっこのように続いてしまって、注意する前よりもトラブルが多発してしまう可能性があります。正義の判断は難しいところですが、誰もが幸福になれる善行を探して実践していきましょう。
「自己成長となることを始めてみる」
自己成長とは現状の自分から良い未来の自分になるためのプロセスですが、「行動」に移さなければ現状のままなので、何かしらの「行動」をすることではじめて自己成長したと言えます。例えば、現状は日本語しか話せませんが、必死に勉強して英語を流暢に喋れるようになったり、相手の言っていることが理解できるようになれば、間違いなく自己成長していると言えます。多くの人が、この最初の一歩である「行動」ができないために自己成長に繋がりません。行動を促すためには「興味を持つ」「目標を設定する」「プロセスを楽しむ」等の工夫をすることで一歩を踏み出すことができるので、行動するための原動力を持って行動に移りましょう。
「学ぶ習慣を身につける」
ビジネスにおいても日常生活においても、成功したいのであれば「学び」は必須と言えます。ただ、誤解しないでほしいのが、難関大学に行くために受験したり、資格勉強したりといったアカデミックな勉強をしなければならないというわけではありません。ほとんどの人はどれだけ歳をとってもなお、世界には知らないことがたくさんあり、その知らないことに興味を持って学び続けることが大切ということです。本書では「もともと習慣とは、人の普段からの振舞いが積み重なって、身に染みついたものだ。このため、自分の心の働きに対しても、習慣は影響を及ぼしていく」と述べられていますが、やはり日々学ぶことを意識して生きていくことで学ぶことが習慣化していくので、些細なことであっても知ろうとする努力を積み重ねて知恵を形成していきましょう。
日々の善行が難しいということであれば、誰でもいいので「1日1感謝」を心がけてみてください。もし、感謝する相手がいないのであれば、自分に感謝するようにしましょう。感謝の心を持つのは他人にも良い影響を与えるだけでなく、自分にも良い影響を与えるのでオススメです。
まとめ
「渋沢栄一」という人物のことは知っていても、何を為した人なのかというのは意外と知られていない気がするので、本書をきっかけに少しでも興味を持って頂ければ嬉しく思います。昨今はとにかく利益を重視した企業が増えてきたと感じますが、利益を増やすだけでビジネス上の道義的責任が疎かになってしまえば、継続的に営業活動をしていくのが難しくなってきているので、経営者のみならず、多くのビジネスパーソンも利益を追求しつつも、道徳心を養う努力を実践して頂ければと思います。
本記事では、知恵を得るために事前にインプットしておきたい情報のみを厳選して記載しておりますので、本書の知恵を得たいと思った方は実際に手にとって読んで頂ければ 幸いです。